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鉄道小バザール



    


鉄道小バザール

鉄道小バザールとは、サラリーマンによる海外乗り鉄っちゃんの記録集です。     




 

 イメージしにくいとは思うのですが、ボリビアは南米の隠れた鉄道王国なのです。

 初掲載:2015年2月 Last Update:2015年2月

                                             


スクレ SECRE 12/1 08:00(08:20)  ポトシ  POTOSI   14:20(15:50)  Bus Carril(レールバス) 立席  Bs.25
ウユニ UYUNI   12/4 02:50(03:18 )  ビジャソン VILLAZON  12:05(13:15)  WARA WARA DEL SUR  
1564-17
Bs.118
Bs.1(ボリビアーノ)=17.3JPY(当時のレート)    注:スクレの駅は、正確には「エル・テハール(EL TEJAR)」駅  (  )内は実際の乗降時刻



 たまたまホームページで見つけた鉄道にくぎ付けになり、南米旅行の旅程を変更しました。そこで見たもの・体験したことは、衝撃の連続。私が今までに乗った世界の鉄道の3指に入ること、間違いなし。

                                                                                                                                       ウユニ・ビジャソン間の鉄道旅はこちら

前日、駅に来てみたものの

 乗車前日の午前中にスクレに到着し、タクシーで、スクレ・EL TEJAR(エル テハール)駅へ。
 最初に乗ったタクシーでは、間違って旧スクレ駅に連れてこられ、やっとの思いで到着。駅の雰囲気を事前に知りたかったのと、チケットの購入を目的にやってきた。しかし、日曜日ということもあり、駅員もおらず、チケット購入は空振りに。とは言うものの、タクシーの運転手も間違えるぐらいだから、当日朝のトラブルを避けることができ、良かったと考えることにしよう。(右写真が間違えた旧スクレ駅)


1時間前に駅に到着。そこには人だかりが
   
 
ホテルをチェックアウトしてタクシーで駅に向かう。出発1時間前の午前7時。しかし、駅に近づくと多くの人だかりが。ヤ、ヤバい、と焦る。というのも、これから乗る予定の列車は、定員が25人ほどだからだ。
 慌ててタクシーを降り、人ごみの中へ。どう見てもチケットを買えそうにない。「前日もっと粘っていたら駅員と会えたかもしれない」「もう1時間前に駅に来るべきだった」と後悔しても、始まらない。

 
人のよさそうな駅員が両手を振って、「もう、売れない」のジェスチャーを繰り返す。何人もの人が売ってもらおうと駅員に詰め寄る。
 「日本からこれに乗るために来た」とスペイン語圏のボリビアで、英語で訴え、最後に「ポルファボール(PLEASEのスペイン語)」を繰り返す。でも、埒が明かない。
 頭の中は「2日後の列車(週3本しかない)に乗るとしたら、旅行は続けられるか」「あきらめてバスでポトシに向かうか…でも、もう二度とこの珍品列車に乗れなくなる」といった思いが頭の中をぐるぐる駆け回る。ああ、もう列車が来た。ああ、もう荷物を屋根に詰め込んでいる…絶体絶命…

粘りに粘っていると「ちょっと待て」
  
 
チケットを持っている人は既に列車に乗りこんでいる。多くの人があきらめ、駅を後にした。もう、出発時刻の8時を過ぎた。万事休す。駅舎の中に人が少なくなってきた。心細い。でも、最後の勇気を振り絞り「No Seat, No Problem. Porfavor」と訴え、優しそうな駅員のおじさんに詰め寄る。

 すると、「ちょっと待て、こっちで待て」と椅子を指さすではないか。ヨシ、希望が見えてきた。2・3分待つ。駅員は別の客とやり取り。ある人には別のチケットを売っている。後日の列車の予約か。ある人は、買えず、駅を後にした。
 まだ2・3人いる。時間切れで置いてけぼりを食らう恐れもある。また、駅員に詰め寄り、Porfavor。駅員が別の鉄道員に何か話しかける。その男性は、手を胸のあたりで振る。もう、無理の合図かもしれない。それでも詰め寄る。
 すると、引出しからチケットを取り出した。25ボリビアーノを渡す。日本円で425円のチケットをやっとの思いで手に入れることができた。

乗り込むと目前に卵の梱包が

 緑のチケットを握りしめ、後は乗り込みさえすればこっちのものだ。
 席はなくとも、いずれは座れるだろうと考えることにする。進行方向右側にドアがあり、ぐるりと車体を回り込む(つまり、プラットホームからは車に乗れず、線路から乗る!!)と、すでにすし詰め状態。

 運転手の右後方にやっとの思いでスペースを確保した。乗客はほとんどが地元民で、観光客は私を除くと3人の白人がいるだけ。おそらく彼らもマニアックな移動を思い立ったのだろう。
 立ちっぱなしではあるが、前方の景色はバッチリ見える。前方の窓の下部には卵を梱包する紙パックが鎮座している。20分遅れの8:20に生活感丸出しのバス、否、“列になっていない”列車が出発する。
 いやがうえにもテンションは上がる。

バス改造の車体に、意味不明のハンドル

 車体前部にベンツのエンブレムが鎮座している。バスを改造した車体なので、腕休めにしかならないハンドルが運転席にある。運転手が時折り操作しているので、ギアは機能を果たしているのだろう。
 小さな石なら、まさに押しつぶしながら進んでいく。雨季の始まりなだけに、両側の崖から石が線路の上に落ちる。時には土砂が線路を埋める場合もあった。運転手はブレーキをかけストップする。
 すると、乗り込んでいる保線員が降りて、シャベルで線路わきを掘る。脱線しないよう、必要最小限の保線をしながらゆっくりと進む。新幹線の運転よりはるかに神経を使うであろうこの運転手に、頭が下がる思いだ。

やっと席を確保

 スクレから基本的に下る一方で、終着のポトシは3900m台なので、後半は上る一方なのだろう。ぼろぼろの橋を超えたり、ガリガリと石をつぶして突き進む。
 
 立ちっぱなしなので景色はいいものの、体が疲れる。羽織っていたジャンパーも脱ぎ、汗をぬぐう。出発から2時間半ほどして降車する人も出てきて混雑率が下がってきた。
 すると、おじさんが「ここに座れ」と指さす。ありがたい。おじさんはスペイン語しか話せず、「コリア?」「ノー、ハポン」ぐらいしか会話は成り立たないが、ありがたい。座ったことにより少し視界が悪くなったが、そんなことを.言ったらバチが当たるか。



VILA VILAに到着

 11時5分にVILA VILAという駅に到着。65.6キロを2時間45分かけて走っており、時速23kmの計算になる。まだまだ先は長い。
 この駅でかなりの乗り降りがあった。車から降り、トイレなどありそうもないので、少し離れたところでおしっこをする。荷物のリュックも、この時間に屋上に上げてもらった。



 乗車時は余裕がなかったので、車体を一回りしてみた。マイクロバス丸出しで、後方から車体下部を見ると、車輪周りが貧相でとても不安定な印象をもった。煙草を吸いだめし、体をほぐし、再び車に乗り込む。11時20分出発。

土砂崩れ現場に遭遇。まさかのスコップ握っての肉体労働


 VILA VILAを出発して23分ほど走ると何故かストップ。駅近くまで逆走し、程なく再出発。理由は今だに不明だ。
 15分ほど走ると、今度は舗装していない道路との交差箇所前でストップ。線路が20mほど土砂で埋まっている。土砂崩れと、道路の土砂で線路が見えない。

 あちゃー、と思っていたら、保線員だけでなく、運転手も降りて土砂を掘り出す。車体後部にシャベルやツルハシを格納しており、このような事態に対処しているのだろう。私も車から降りて、最初は煙草をふかしたり、周りの景色を見ていた。他の人々も降りて思い思いの時を過ごす。地元民のオバさんやおじさんも土砂の掘り出しを手伝っている。

 「こりゃ、いい思い出になるゾ」と、おじさんの腰をポンポンと叩き、「チェンジ」と言って右手首をクルリと回してジェスチャー。意思は伝わるもので、すぐにシャベルを渡してくれた。
 腰を入れて土砂を掘り、線路左わきに放り投げる。結構重労働ではあるが、これ以上の体験は望んでも味わえない。2・3分ほどして、白人に、写真を撮ってくれと言ってデジカメを渡す。彼はゲラゲラ笑い、写真を撮ってくれた。

 しばらく土砂掘りをして疲れてきたので、有無を言わさず白人にシャベルを渡した。面食らったようだが、悪乗りして付き合ってくれた。結局もう一人の白人との3人で、1つのシャベルを交替して受け持つようになった。少しは地元の役に立ったかなと、まんざらではない気持ちだ。
 40分ほどして、とりあえず土砂掘りを終え、車に乗り込んだ。ゆっくりと、時にはバックしながら不通区間を踏み固めるようにして乗り越えた。やっと前に進める。



この車は現地の人たちのライフライン


 時折り、牛や犬が線路を塞ぐ。ロバにも出くわした。特に犬は何度も車体に近づき、吠える。犬たちにとっては絶好のアトラクションなのかもしれない。その都度、警笛を鳴らす。車体前方にカウキャッチャー(牛除けのひさし)があるのはそのためだろう。


    このあたりになると、混雑度も下がり、立っている人がいても視界を遮られることはなくなってきた。上る一方になってきた。一応駅はあるが、駅でなくても乗り降りをする人がいる。こんなところで降りて、どうするの?という場所でも降車する人がいる。おそらく谷を下りて、かなり歩いて我が家にたどり着くのだろう。
 バスが来そうにないこんな地域を走るこの車は、まさに彼ら・彼女たちのライフラインなのだろう。


ようやくまったりモードに

 峠にさしかかってきた。すると小さな雲がその峠に横たわってきた。雨も降りだしてきた。VILA VILAでリュックを屋根に上げてもらったことが裏目に出た。いくらブルーシートをかけているからといっても、濡れてしまうに違いない。


 道のりの険しさはなくなり、視界の広い大地の上を少しずつ上っていく感じになってきた。沿線最大の駅であるBETANZOSでかなりの人が降り、空席も出てきた。線路状態は相変わらず悪く、時折り大きく揺れる。でも、エキサイティングな風景ではなく、まったりモードで、うつらうつらしてきた。時折り、線路と平行して舗装道路が現れる。都市が近くなってきた証拠だ。

 セロ・リコが見えてきた

  眼下に、山肌に這いつくばるように家が立ち並んでいるのが見える。ポトシだ。セロ・リコも見える。セロ・リコとは「富の山」の意味。ポトシは銀の産出地として歴史的に有名で、世界遺産にもなっている。街の標高は4000mを超えるところもある。
 車は警笛を鳴らしながら、小遊園地のようなところをゆっくりと横切る。1550分、予定の時刻から90分遅れでポトシの駅に到着した。駅名表示版に標高3904mとあった。

How To Get Tickets
  チケットは、駅で購入するしかありません。前日に入手したほうがいいことは、本文に記載した通りです。
 私はなんとか入手できたものの、明らかに結果オーライです。始発のEL TEJAR駅で、スペイン語のわかる旅行者から聞いたところ、満員でありながら切符購入待ちをしている地元の方々に、駅員が「もう満員なので、女性のみにチケットを販売する。男性は今日は乗れない」と言ったとか。
 つまり、我々は地元の方々の生活列車に、割り込んで乗車していることに他ならないのです。
 
また、注意すべき点は週3往復しかなく、しかも往路と復路は運転曜日が異なることです。
 スクレ⇒ポトシ:月・水・金  ポトシ⇒スクレ:火・木・土
レールバスのHP http://www.fca.com.bo/subcontenido.php?seccion=2&subseccion=41&subcontenido=21
 
Tips

ウユニ塩原へのもう一つのルートという手も
   ウユニ塩原へのルートとして代表的なのが次の3方法と思います。  
  A:ラパスからバスでウユニへ一直線(Todo Turismoが有名)
  B:ラパス・オルーロ間はバス、オルーロ・ウユニ間は鉄道
  C:ラパスから飛行機でひとっ飛び
  A・Bだと、夜間の移動がメインです。そこで、私が使ったルートを選択肢に加えてみると、どうでしょうか。
 @ラパスからスクレまで飛行機(アマゾナス航空)で移動し、スクレ
 観光AレールバスでスクレへBスクレ・ウユニ間をバス移動
 スクレ・ポトシはいずれも世界遺産です。特にポトシではハードで有名なセロ・リコ観光(鉱山見学)もできます。
 私自身、マイアミ・ラパス間はアメリカン航空を利用し、アマゾナス航空を利用して、そのままスクレに向かいました。
 スクレの標高は2900mなので、ウユニ直前の高度順応の役割を果たすこともできました。また、ポトシ・ウユニ間は舗装道路で4時間で到着。ポトシを単なる中継地点としたら、バスターミナルにそのまま移動(徒歩10分ほど)、バスに乗れば夕食(夜食?)をウユニで摂ることができます。
 ラパス・ウユニを往復するなら、どちらかに利用する方法もあります。また、そのままアルゼンチンへ南下するなら、ウユニ・ビジャソン間の鉄道はオルーロ・ウユニ間の鉄道と同じなので、変化をつける意味でも有効です。最悪、レールバスが利用できなくても、スクレ・ポトシ間はバスがたくさん出っています。

参考資料
いそべさとし氏のホームページ「ペルー・ボリビア23日近くて遠くて地球紀行」http://www.isobesatoshi.com/kaigai/perubolivia/index.html 
 このホームページでボリビアのレールバスを見つけ、ボリビアの旅程を変更しました。氏の行程と私の行程は逆でしたが、大変参考にさせていただきました。

★世界の鉄道紀行 小牟田哲彦著 講談社現代新書(2014年刊)
 ボリビアの、同様のレールバス「コチャバンバ〜アイキレ」間の乗車記が掲載されています。同書は、当ホームページで掲載のアンデス中央鉄道の乗車記も掲載されており、貴重なマニアック鉄道の世界を展開しています。惜しむらくは、写真が全くない!(新書の異常に大きな“フンドシ”に、レールバスの写真が、表紙のごとく掲載されています)

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